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主張

 

TPPをはじめとする状況をふまえ部落の農業・畜産食肉業の
競争力を高める強力なとりくみを

「解放新聞」(2017.12.04-2837)

 全国農林漁業運動部長会議と現地視察を11月14、15日、鳥取県琴浦町で開催した。初日に、農業法人「八頭(やず)船岡農場」と地域の「農地・水保全活動組織」の活動報告がおこなわれた。

 まず、「中山間地域農業・農村の再生を考える」というテーマで、農業法人「八頭船岡農場」の立ちあげ、水田の有効活用や野菜の生産団地などのとりくみ、鳥獣や耕作放棄地の対策、さらに「ふなおか共生の里づくり」としてほかの農業法人や企業(農業)との連帯をすすめている状況が報告され、農村(農家)と都市(消費者)との連帯と連携についての課題提起がされた。つづいて、地域から「周辺地域を巻き込んだ新たな解放運動」と題して出上(いでかみ)農地・水保全活動組織から報告がされた。出村(分村)もふくめた地域の農地と周辺地域の農地が入り組んだ状況のなか同和対策事業を活用し、周辺地域も巻き込んで圃場整備(農地の区画整備、用排水施設整備)や野菜栽培施設の建設などのとりくみが報告され、地域の受益者が農地で60%、野菜栽培施設で56%という状況のなかで、とりくみの苦労や工夫について報告された。さらに小集落事業によって周辺地域もふくめた改善にとりくんできたが、一部に課題も残されていることが翌日のフィールドワークのなかで説明された。

 全国の部落に共通する問題や課題にかかわって、鳥取県琴浦町でのとりくみは、部落の農業の方向性にたいする提起でもある。部落の農業の実態は、中山間地域・従事者の高齢化・小規模零細という全国の農業がかかえる凝縮した状況にある。近年の耕作放棄地や鳥獣被害などの問題についても同様である。

 さて、10月30日の中央行動での農水省交渉で、アメリカ抜きでのTPP(環太平洋経済連携協定)が大筋合意した状況が報告された。以前から提起しているように、TPPは医療・労働・保険・知的財産・金融・環境など多岐にわたっており、なかでも日本の農業に与える影響が大きいが、これまで政府は「日本の農業を守った」としている。

 しかしそれは「経過措置」ということにすぎないのが現実だ。これまで「品質・鮮度・安全性」の問題をかかえたままの安価な食糧が市場にあふれるということが危惧され、生産性やコストなどの課題をもつ日本の農業を直撃するといわれてきた。これにたいして農水省の基本的な方向は、畜産もふくめ「生産性の向上とコストの軽減」「ブランド化」をすすめ、国際的な競争力を高めるということである。しかし、日本の農業の実態からすると大きなギャップがあり、とりわけ部落の農家の状況からするときわめて厳しい状況で、交渉では「現状をふまえた、より具体的な対策」を求めた。こうした点について農水省の回答は「現場の声を聞きながら対応していく」というものだった。

 また部落の食肉や畜産についても近年の厳しい経営状況に加え、TPPによる安価な輸入肉の市場への大量流入によって決定的な状況に陥る可能性があることを明らかにしてきた。これまでから私たちは、TPPのもたらす影響を考えると、農業や国民生活に厳しい状況を強いるTPPには反対である。しかも今後、アメリカからの二国間協議が現実味を帯びてくることにも注視しなければならない。しかし一方では、部落の農業や食肉・畜産を守るという立場で現実的な対応が必要であるとも考えている。

 さて近年、企業の農業への新規参入と各種のアグリビジネス(農業関連産業)などの起業化、産直施設など産地と消費地を結ぶとりくみ、「道の駅」などへの参入、高品質化やブランド化へのさまざまな努力がおこなわれてきている。また、部落の農業者も以前からライスセンター(もみ共同乾燥調整施設)・育苗施設・共同作業所・農機具など共同利用施設を導入し、活性化へのとりくみをすすめてきており、近年の状況を受けてフードバンクや福祉施設との連携など創意工夫して事業化にとりくんでいる地域もある。

 しかし、そうしたとりくみの重要性は認識しながらも部落の農家の多くは、規模・水利・立地・高齢化などの問題をかかえている。さらに新たなとりくみのために克服しなければならない課題(資金・経営規模・コスト・従事者の確保など)の前に足踏み状況にある。こうした状況は、これまでの農水省交渉のなかでも提起されている。

 さらに農水省の政策でさまざまな事業へのメニューがつくられているが、その前にある「認定農業者制度」が大きな壁になっているのである。部落の農家の多くは、小規模零細や立地条件(中山間地域、少数世帯の部落など)から「認定農業者制度」が求める認定要件を満たすことが困難な実態であり、結果として農水省の事業や制度から排除される状況にある。また、「経営体育成支援事業」のなかでも小規模・零細向け地域の農機具等の導入支援のための「条件不利地域補助型」の活用が、農機具などの共同利用施設の更新には有効だと考えられるが、農水省の徹底の不足もあって、自治体の対応に相当の格差があり、当然利用できるにもかかわらず利用できないという状況も提起されている。

 部落の農業は、さまざまな面で厳しい状況にある。しかし、無限の可能性と夢があることも事実だ。そのためにも部落の農業の変革への意識を高めなければならない。

 といっても、このことはけっして目新しいものではなく、多くのとりくみが全国的にすでになされていることでもある。具体的には、「集落営農」への方向を基礎に周辺地域の農家との連携をすすめ、耕作放棄地をふくめた農地の集約化と作業の代行、共同利用施設の連携をはかること。さらに「法人化」を視野に入れた非農業者の参加の促進などである。

 今回、鳥取県で報告視察を受けた「出上農地・水保全活動組織」などのとりくみが大きな参考になる。さらに、「地域・水・空気・太陽」をベースにした環境にやさしい持続可能な農業への提起として、米・野菜栽培と酪農・畜産などとの連携による「循環型農業」や「有機農業」も重要な課題である。さらにほかの農業生産グループとの連携や「産地」と「消費地」を結ぶネットワークの構築を早急に検討することも重要で、今回の「ブランド化」や「雇用促進」を生み出している「ふなおか共生の里づくり」の活動に注視しなければならない。さらに、そうした意味でフードバンクとの連携をはじめ、各地ですすめられている、さまざまなとりくみや工夫に大いに学んでいかなければならない。

 これまで農林漁業運動部として、視察や活動交流、農水省交渉などを実施してきたが、それらを通じて部落の農業、畜産や食肉業は、全国一律の状況ではなく、その地域性に応じたさまざまな課題をかかえていることや、課題解決や要求実現への状況をめぐって農水省と地方自治体の認識や対応に多くの格差が生じていることが明らかにされてきた。そうしたことをふまえ、早急に全国の部落農家の実態把握をおこなうとともに、具体的な課題や要求をもとに自治体交渉や農水省交渉をすすめていかなければならない。

 また、部落の農業の課題は、同時に地域(農漁村)を守る課題でもある。そうした意味で農林漁業運動部として、人と人の交流や雇用創出の視点もふくめた「農業の競争力を高める」を運動の柱に、モデル・プランの提示や情報の交換をはじめ具体的なとりくみを強力にすすめていこう。



 

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