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NEWS & 主張

ハンセン病隔離政策の被害認めず
〜広島高裁松江支部・家族への被害はないと

「解放新聞」(2018.08.13-2871)

 第44回部落解放文学賞の表彰式と懇親会を7月22日大阪市内のホテルでひらき、受賞者と選者ら55人が出席した。部落解放文学賞実行委員会の主催。

 表彰式では、伊藤満・実行委員会事務局長の後任に就任した歯朶山加代・事務局長が、自身の経験を重ねた受賞作を紹介し、「さまざまな運動団体の文学賞のなかでも長く続いてきた本文学賞を大切に、よりよくしていくことを実行委で確認し合った。受賞者の皆さんに、この文学賞の意義をさらに多くの人に伝えていただければありがたい」と開会あいさつ。鎌田慧・実行委員会代表が、出席した受賞者10人一人ひとりに表彰状を手渡した。

 懇親会は、詩部門の選者である金時鐘さんの乾杯ではじまった。「日本は災禍の国なのに原発を再稼働させ、2年間も国会を空転させる安倍政権は揺るがない。こんなことがあっていいのか、というのがこの国。どうしようもない事態に鬱鬱とする、そこに迫れるのは文学しかない。世の中が改まるときには底辺が大きく動くが、一向に底辺が動かない。その底辺を動かす文学のために、受賞者の祝福のために、乾杯」。各部門の一次選者と最終選者が紹介されたあと、選者が選評をのべ、出席した受賞者が一人ひとり壇上に立って受賞の言葉をのべた(次号詳報予定)。小説部門で入賞した方政雄(パン・ジョンウン)さんに金さんが駆け寄り、「兵庫県立湊川高校で朝鮮語科を引き継いでくれた友人」と紹介して祝福したり、詩部門で佳作を受賞した、はたよしみさんが自作曲「重い女」を鍵盤ハーモニカで演奏しながら歌う一幕もあった。

 第45回部落解放文学賞への応募締切は10月末(当日消印有効)。各部門への積極的な応募を。 ハンセン病隔離政策によって非入所者だった母親(故人)とともに偏見や差別の被害を受けたとして、鳥取県の男性(72歳)が国と県に国家賠償を求めた鳥取非入所者遺族国賠訴訟の控訴審判決が7月24日、島根県松江市・広島高裁松江支部であった。栂村明剛(つがむらあきよし)・裁判長は判決で「隔離政策で損害を受けたのは患者であり、家族ではない」として一審の鳥取地裁判決(2015年9月)を支持し、控訴を棄却した。

 判決文では、ハンセン病患者にたいする偏見差別は国の隔離政策の以前からきわめて深刻であり「国が偏見や差別を創出したとはいえない」とし、その上で「すべての患者がハンセン病の感染源とはまったくなり得ないとまではいえず、厚生大臣が患者が社会での生活を公衆衛生上なんら問題がないことを市民に周知徹底する義務を負っていたとまではいえない」、「差別をとりのぞくために国が相当な措置をとる法的義務があるとはいえない」とまで断言した。「らい予防法」違憲国賠請求訴訟判決(2001年・熊本地裁)をまったく顧みない不当判決となった。非入所者の遺族が国に差別被害を訴えた国賠訴訟での高裁判決はこれがはじめてで、熊本地裁でハンセン病家族568人が現在おこしているハンセン病家族訴訟の先駆けとなった提訴だった。原告は国と県に①母の非入所者としての被害にもとづく損害賠償請求権の相続分②非入所者家族としての被害とあわせて1925万円を賠償請求したが①は消滅時効を理由に請求を認めず②も原告にたいする被害はない、として損害賠償を認めなかった。

 一審の鳥取地裁判決は国の隔離政策のため患者の子は「潜在的な感染者」という偏見や差別にさらされてきたと指摘し、家族の差別被害について国の責任を認める初判断をした。しかし、高裁では裁判官は専門家証人尋問で原告のハンセン病家族としての差別被害を聞きながら判決では原告が受けた具体的な偏見・差別被害はない、とした。

 判決後の報告集会で原告は「ハンセン病への差別が裁判所にも根強く存在する。裁判官は家族の被害に向き合ってほしい」とのべた。原告代理人の近藤剛・弁護士は「隔離政策によって差別を助長した国自身が消滅時効をもちだし賠償に応じないという姿勢は許されない。裁判所自身も差別の加害者だということをまったく顧みず、ハンセン病問題を理解しようとしない裁判所の姿勢を表した判決」と批判した。ハンセン病家族訴訟弁護団の共同代表である徳田靖之・弁護士は「最悪の差別判決。血のにじむような思いで熊本地裁判決をかちとった当事者の思いをふみにじるもの。ハンセン病問題は終わった問題ではない。全力をあげてこの判決をくつがえすようたたかっていきたい」とのべた。弁護団は同日この判決にたいする声明を発表。判決の翌日の25日には東京・衆院第2議員会館で家族被害を考える院内集会がひらかれた。原告の男性は、31日に最高裁に上告と上告受理を申し立てた。

 

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