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8月30日に提出した下山第2鑑定など新証拠の学習をすすめ
石川無実を広めよう

「解放新聞」(2018.09.10-2874)

 弁護団は2018年8月30日、下山進・吉備国際大学名誉教授が作成した鑑定書(下山第2鑑定)などの新証拠を提出した。第3次再審請求で提出された新証拠は217点になった。

 下山第2鑑定は、蛍光(けいこう)X(エックス)線分析装置を使ってインクにふくまれる元素を分析することで、証拠の万年筆が被害者のものではないことを客観的、科学的に明らかにしている。

 狭山事件の有罪判決(東京高裁・寺尾正二裁判長・1974年10月31日)は、被害者の所持品である鞄、万年筆、腕時計が石川さんの自白どおり発見されたとして、これを「秘密の暴露」(犯人しか知らない事実が自白によって判明した)と認定し、自白が真実で、石川さんが犯人であることを示す決定的証拠とした。とくに、この3つの物証のなかでも万年筆は、石川さんの自宅から発見されたという意味で有罪の重要証拠とされた。

 弁護団は、2016年8月に下山第1鑑定を提出した。下山第1鑑定は、事件当時、発見万年筆のインクや被害者が使用していたインク瓶のインクなどをペーパークロマトグラフィ検査によって検査した荏原秀介・科学警察研究所技官の鑑定を精査・検証し、発見万年筆には被害者が使用していたインクが入っていなかったことを指摘した。

 その後、弁護団の証拠開示請求によって、2016年10月、事件当時、発見万年筆で書いたとされる数字が添付された調書が証拠開示された。また、弁護団がパイロット社に問い合わせた結果、被害者が使用していた当時のジェットブルーインクには、クロム(金属元素の一つ)がふくまれ、一方、ブルーブラックインクにはクロムはふくまれていないこともわかった。

 弁護団は、これらの資料をもとに、発見万年筆で書いたとされる数字のインク、証拠開示された被害者が使用していたインク瓶のインク、被害者が事件当日に書いたペン習字浄書のインクなどについて、下山博士に蛍光X線分析による鑑定を依頼した。蛍光X線分析とは、物質にX線をあてるとふくまれる元素に固有のエネルギーの蛍光X線が発生することを利用して、物質にふくまれる元素を分析するもの。下山博士は、検査試料を破壊しないで蛍光X線を測定し元素を分析する装置を使って、検察庁で上記の証拠について蛍光X線分析をおこなった。その結果、被害者が使っていたインク瓶のインク、被害者が事件当日に書いたペン習字浄書の文字インクからはクロム元素が検出され、一方、証拠の万年筆(発見万年筆)で書いたとされる数字のインクからはクロム元素が検出されなかったのである。

 下山第2鑑定では、クロム元素をふくむジェットブルーインクが入っていた万年筆にブルーブラックインクを吸入して書いた文字のインクも同じ装置で検査し、クロム元素が検出されることを確認している。別インクを「補充」しても元のインクのクロム元素が検出されなくなることはないのである。

 以上の検査結果から、下山第2鑑定は、証拠の万年筆のインクからクロム元素が検出されなかったことは、ペン習字浄書のインクがふくまれていないと考えられると結論づけている。この鑑定結果は、証拠の万年筆が被害者のものではないということを示している。

 寺尾判決は、石川さんの家から発見された万年筆が被害者のものであることを前提として、自白どおり発見されたことは自白が真実であることを示す「秘密の暴露」(犯人しか知らない事実=万年筆の隠し場所が自白で判明した)であるとして、有罪の証拠としている。

 下山第2鑑定は、証拠開示された「数字」やペン習字浄書のインクを蛍光X線分析という科学的方法によって分析し、証拠の万年筆が被害者のものではないことを客観的に明らかにした。下山第2鑑定によって、殺害後、被害者の万年筆を自宅にもち帰ったという石川さんの自白がまったく虚偽であり、有罪証拠とされたものが事件と関係のないものであることが明らかになったのだ。下山第2鑑定は、寺尾判決を根底から突き崩す決定的新証拠であり、東京高裁第4刑事部(後藤眞理子・裁判長)は一日も早く再審を開始すべきだ。

 7月10日に弁護団は、元京都府警察本部科学捜査研究所の技官の平岡義博・立命館大学教授による鑑定意見書2通、証拠開示された捜査報告書などを新証拠として提出した。寺尾判決は客観的な有罪証拠の一つとしてスコップをあげている。死体発見現場から約125メートルの麦畑で発見されたスコップは、石川さんがかつて働いていたI養豚場から盗んで死体を埋めるのに使ったものである、と自白を離れて認定できるというのである。その根拠は、埼玉県警鑑識課のスコップ付着の土壌と油脂の鑑定である。平岡意見書は、スコップ付着土壌に死体発見現場付近の土と類似するものがあったという埼玉県警鑑識課の鑑定の結論は誤りであると指摘している。また、警察の鑑定からはスコップ付着物に油脂があったというだけで、I養豚場で使われていたスコップであると特定できないと指摘している。証拠のスコップが死体を埋めるのに使われたものとも、I養豚場のものともいえないことが、警察の捜査で土の分析の研究と実務を長年担ってきた元科捜研技官の科学的な分析で明らかになったことは重要だ。寺尾判決の有罪証拠がここでも崩れている。

 また、第3次再審で証拠開示された当時の捜査報告書で、スコップ発見直後から連日、県警鑑識課が捜査本部に発見スコップが養豚場で使われていたものとして差し支えない、などと報告していることがわかった。5月21日には、I養豚場でかつて働いていてスコップが盗める者として、石川一雄さんの名前が捜査本部に報告されている。養豚場の経営者のIさんは石川さんと同じ被差別部落の出身であった。警察は、発見スコップが犯行に使われたものという証明もI養豚場のものと特定できる根拠もなかったにもかかわらず、スコップをI養豚場に結びつけ、I養豚場関係者を中心に被差別部落に見込み捜査をおこない、石川さんを狙い打ちして別件逮捕し、自白を強要したことが明らかだ。

 東京高裁第4刑事部の後藤眞理子・裁判長は、こうした狭山事件の捜査の経過の問題を直視し、有罪証拠や自白が信用できるのか再検討しなければならない。

 当時の石川さんが非識字者で脅迫状を書けなかったことを明らかにした森鑑定、コンピュータによる筆跡鑑定で石川さんと脅迫状を書いた犯人は別人と指摘した福江鑑定、取調べ録音テープを分析した心理学鑑定などの新証拠によって、石川さんの無実が明らかになっている。新証拠の学習をすすめ、より多くの人に石川さんの無実を広めよう。

 

 

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