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主張

 

差別の現実を明らかにし、子どもたちの育ちや学びを保障する
反差別の教育内容を深化・発展させよう

「解放新聞」(2018.10.15-2879)

 第70回全国人権・同和教育研究大会が、11月17、18日、滋賀県大津市のウカルちゃんアリーナ(滋賀県立体育館)を主会場に開催される。滋賀県での開催は、1969年の第21回研究大会いらい、およそ半世紀ぶりとなる。

 格差と貧困問題が深刻化するなかで、個人の尊厳と人権を否定する不寛容な風潮が日本社会全体に広がっている。とりわけ、SNSなどインターネットでは、差別煽動への対応が遅れており、少数者や社会的弱者への共感や想像力、寛容さを欠いた差別的、排他的な言説で溢れている。

 こうした差別に対抗し、人権の進捗に向けて、「部落差別解消推進法」や「障害者差別解消法」、「ヘイトスピーチ解消法」など、差別解消に向けた法の趣旨と内容を人権教育のなかで活かしていくことが重要である。

 具体的な部落との出会いを学ばずに、抽象的に差別の厳しさだけを強調する学習内容ではなく、今日的な差別の現実をふまえた部落問題学習の創造と実践が求められている。

 子どもたちを無防備な状態で社会に放り出さないために、また、個人の尊重と人権をもっとも大切な価値として社会に定着させていくために、人権・同和教育のとりくみをいっそう強化していかなければならない。

 人権・同和教育の推進にあたっては、学校や地域の実情に応じて、部落差別をはじめ障害者、ヘイトスピーチ、性的多様性などさまざまな人権課題にとりくむことが求められているとともに、その果たす役割もますます重要になっている。

 このように、人権・同和教育の推進が、これまで以上に求められている現下において、開催地の滋賀県実行委員会でも、先達が築いてきたこれまでの人権・同和教育の積み上げを、若い世代に引き継ぐことが、今日の緊急の課題であると認識されている。この厳しい現実は、滋賀に限らず、全国各地の人権・同和教育の実践の現場に共通する課題でもある。

 ここで今一度、研究大会の「差別の現実から深く学び、生活を高め、未来を保障する教育を確立しよう」というテーマの意味を問い直し、それぞれの地域で子どもや保護者の暮らしと向き合うなかで教育課題として見いだし、具体的な実践につなげていく人権・同和教育の基本に立ち戻ったとりくみをすすめていこう。

 今春以降、子どもたちの進路保障にかかわって、公正採用選考のとりくみや、統一応募用紙の趣旨に照らして、不適切とされる事案の報告があった。

 ひとつは、書店で市販されている入学選抜試験の面接対策集、いわゆる指南本が、公正採用選考のルールに照らすと不適切であるという、長年同和教育にかかわってきたベテラン教師からの指摘だ。家族の職業や思想信条の自由にかかわる質問が、面接でよく質問される事例として複数掲載されている。入試面接での質問内容を規制する法律がない現行法下においては、「不適切」とされるが、法令違反の対象とはならず、こうした書籍が教育系出版社から販売され、書店に陳列されているのが現実だ。自省を込めて、今後の運動の課題としたい。

 もうひとつは、応募前職場見学の申込時に、保護者の「勤務先」や「国籍」の記載、また、採用試験の申込時に「実家住所」の記載を求めるというものだ。

 書類の作成主である企業はもとより、監督官庁である労働行政、教育行政各機関など、それぞれの責任が問われるものであるが、子どもたちの進路保障にかかわる学校現場でも、この書類の問題に気がつくことなく、子どもたちや保護者に配布をしてしまった事実があり、猛省を求めたい。

 おそらく紹介した事案は、氷山の一角であり、残念ながら類似の事例が、全国各地で少なからず惹起しているのが現実であろう。

 しかしながら、上述したいずれの事例も、部落差別の歴史や現実の概要について、少しでも学び、理解していれば、未然に防げていたものであり、格段に高度な研修等を必要とするものではない。

 この間、部落差別をはじめ個別人権課題の多くが、人権教育・啓発の学びの課題として、理解や共感すべき対象としてのみ、とりあげられてきたきらいがありはしないだろうか。

 今日、さまざまな状況にある子どもたちが、心身ともに危機的状況に追い込まれ、たやすく差別や人権侵害にさらされる事件が頻発しており、そこには社会の構造的な差別の現実が深く横たわっている。

 子どもたち、保護者、地域の生活のなかにある差別の現実を明らかにし、子どもたちの育ちや学びを保障する反差別の教育内容を深化・発展させていこう。

 各地の人権教育の豊かな実践を第70回滋賀大会にもち寄り、人権教育の輪をさらに広げていこう。

 

 

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