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世界人権宣言70周年を記念して、人権週間のとりくみを強化しよう

「解放新聞」(2018.11.26-2884)

 第二次世界大戦後の1948年、人間の尊厳を普遍的価値として国連は「すべての人間が平等である」「いかなる理由による差別も受けない」とうたいあげた世界人権宣言を採択した。「力こそ正義」の国際法のもと、欧米列強は強力な軍隊を他国に送り込み、奴隷制をつくり、植民地支配をし、「文明化の及ばない未開人・野蛮人」という人種差別にまみれた人間観から、戦争・飢餓・虐殺を引き起こしてきた。第二次大戦後、世界は深い反省から人間観を大転換し、ふたたび惨劇をくり返さないために人権の本質的平等原則を掲げた。「すべての人間は例外なく平等である」との宣言を実現していく、困難な忍耐が求められる歩みを持続的に推進してきた。人権宣言の理想は、例外なくすべての人の生活の場で機能しなければ意味がない。

 宣言を具体化するため、さまざななマイノリティの人権保障を書き込んだ国際人権諸条約が国連総会で採択されてきた。1965年、人種差別撤廃条約を採択。宣言から18年後の66年に「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)と「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)を国際人権規約として採択し、実行できる条件を整え発効したのは76年だ。さらに女性差別撤廃条約、子どもの権利条約、難民条約、障害者権利条約などが採択された。

 国際人権諸条約を実現するため、人権の国際的保障の努力も積み重ねてきた。1993年、国連人権高等弁務官が設置され、2006年には国連人権委員会が改組され人権理事会が設置された。人権の主流化・ジェンダーの主流化が重要な位置を占めるにいたる。

 しかし、「人間の平等」を実現するのは国家である。国境線内でのマイノリティへの社会的不正義は国家によって合法化され、国家中心主義をとる国家は国境線内の差別や人権侵害を認めてこなかった。内政不干渉の原則のもと、「人権の普遍性」を掲げる国際法は黙殺され、国境線内におよばなかった。

 それでも、差別や人権侵害に曝されてきたマイノリティは声をあげ、人権侵害の歴史と差別の事実を世界に訴えた。ふたたび人間の尊厳が侵害されないよう、国境線を越えてマイノリティの人権を保障させる「人権の国際化」の闘いは続けられた。国連は各国に人権条約の締結を促し、国際人権基準が国境線をこえて各国に浸透し、国内の法律と制度によるマイノリティへの不正義を克服する流れをつくり出してきた。沈黙を強いられてきたマイノリティが歴史の表舞台に登場してきた。みずから人権侵害を語り、「人権の普遍性」のもと、権利回復の流れを生み出した。

 日本では、条約が国会で承認され批准されると憲法につぐ国内法となる。マイノリティの人権を保障する新しい人権概念が条約によって国家の法律や制度に組み込まれる。国家・市民が条約の新しい人権概念を人権教育・啓発によって学び直していくことで、マイノリティの立場から世界を変革する流れが生まれる。まさしく宣言の時代から実践の時代に移行する。

 こうした流れを確実にしたのは、1995年の第4回世界女性会議(北京会議)であり、2001年の反人種主義・差別撤廃世界会議(ダーバン会議)である。女性の権利は人権であると宣言し、暴力排除キャンペーンを推進した。アジア、アフリカそして先住民族が困窮と貧困のなかで苦悩している原因は、過去の奴隷制や植民地支配にあるとし、その誤りを認めた。マイノリティへの差別や人権侵害はその国の法律と制度によって生み出されてきたことを確認し、その誤りを認めて謝罪する謝罪の時代がはじまった。

 宣言の実践の時代を迎えて国連は、国際人権諸条約が実効性をもち、批准した国内で機能し、マイノリティにたいする不正義の是正が実現するよう人権保障体制を整えてきた。そのために4つの柱がある。①定期的に政府報告書を提出し、条約委員会での審査を受ける②条約を国内裁判所の判決で使う③国内人権委員会による監視④個人通報制度である。

 国家中心主義をとる日本は条約の実践にきわめて消極的だ。個人通報制度は裁判の三審制の破壊だとして参加せず、国内人権委員会はいまだ設置されていない。国内の裁判所が国際人権法にもとづいて判決を出すケースはいまだ少ないが、最高裁が条約を念頭に置き、婚外子裁判では判例を変更し、国籍法裁判では違憲判決を出した。ヘイトスピーチにたいして人種差別撤廃条約に違反するとした判決を出すなど、条約を国内法として機能させようとするとりくみは歓迎する。

 政府報告書の審査に向けて部落解放同盟とIMADRはNGOと連携し、人種差別撤廃委員会や国連人権理事会の特別報告者に国内のマイノリティの人権状況に関する情報提供をしてきた。政府報告書にたいする有効なカウンターレポートを提出し、条約委員会での議論を保障し、効果的な勧告が出されるようになった。

 2001年の人種差別撤廃委員会第1回政府報告書審査から、政府は「世系にカースト制度や部落問題が入る」との条約委員会見解を受け入れてこなかった。02年、人種差別撤廃委員会は一般的勧告29を採択し、「インドのダリットや日本の部落問題」を「世系に基づく差別」として概念整理した。17年、国連人権高等弁務官事務所は、「世系に基づく差別撤廃」のとりくみを前進させるために「国連「世系に基づく差別」撤廃のためのガイダンスツール」を作成した。今年4月に、国連人権高等弁務官事務所とIMADRとで、ガイダンスツールを知ってもらうための国際会議(世系に基づく差別撤廃のための国際シンポジウム)を共催し、人種差別撤廃委員会委員らと情報交換した。

 8月、人種差別撤廃委員会で政府報告書が審査され、総括所見が採択された。「部落差別解消推進法」が成立しても、政府報告書に部落問題に関する記載は一つもなかった。総括所見は厳しく、条約に参加しながらいっこうに条約の国際基準を実行しようとしない政府への苛立ちをあらわにした。審査の場での政府回答は前回と同様なくり返しだった。ただ、「条約加入当時、部落問題は人種問題でないので、条約に入らないとの見解を出した。しかし、加入当時から時間が経ち、物事が変化し、深化しているので広い視野で見ていく必要がある」と含みのある答弁をした。国際基準である一般的勧告29を受け入れ、世系に部落問題は入るとの見解を認めるべきだとの強い勧告が出された。

 総括所見の冒頭では、人種的差別を禁止する包括的差別禁止法の制定、とりくみが停滞しているパリ原則に基づく国内人権機関の迅速な設置、差別助長の言動を禁止する条約4条の留保の撤回などを求めた。ヘイトスピーチ解消法の成立を評価しながらもヘイトスピーチが減らない現状を指摘し、禁止措置、実行者への制裁を求めた。マイノリティ女性の複合差別に関する統計の収集、意思決定プロセスへの参加の権利・機会の確保など、次回定期報告で情報提供するよう勧告された。

 条約委員会が再三勧告している「包括的な差別禁止法」と「人権侵害救済法」の制定、人権委員会の設置は喫緊の課題である。あらゆる形態の人種的差別を禁止し、終わらせるために条約に参加している。政府には履行義務がある。人権週間を機に、あらためて世界人権宣言や国際人権諸条約を学び直して、国内法として機能させるとりくみを強化したい。

 

 

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